監修:筑波大学 健幸ライフスタイル開発研究センター長 筑波大学医学医療系 地域総合診療医学 准教授 吉本尚先生

こんな場合は相談窓口や医療機関に相談しましょう

酒気帯び運転で事故に

会社帰りにバーで

会社近くのバーのカウンター。Hさんは同期の友人と二人、自分たちの今後について語り合っています。転職を考えているという友人に対しHさんは、

「俺は今の仕事に満足してるんだ。大きなプロジェクトも任せてもらってる。だから、もっと頑張らないと、って考えてるよ」

そう言ってグラスの残りをぐいっと飲み干し、腕時計に目をやりました。

「もうこんな時間か。明日の朝イチで得意先に持って行く仕事が残ってるから、そろそろ帰るよ」

椅子から立ち上がったものの、足元がおぼつかないHさん。

「おい大丈夫か。前より飲む量が増えてないか?」と同期の友人は心配そうに肩を貸します。

「仕事を頑張るのもいいが、酒はほどほどにしておけよ」

Hさんは笑って手を振り、店を出ました。

帰宅後もグラスを片手に仕事

時間はすでに深夜。Hさんは自宅のパソコンに向かい、持ち帰った仕事を続けていました。マウスの横にはウイスキーのボトルが。だめだとわかっているのに、つい手が伸びてしまいます。

「俺にとって酒はガソリンみたいなものだ。飲まないと元気が湧いてこない。1杯だけならいいだろう」

そう自分に言い聞かせるHさんでしたが、1杯だけのはずが2杯、3杯と止まらなくなり、次第に心地よい気分に浸っていくのでした。

「……ん、少し眠ってしまったか?」

突っ伏していたデスクから顔を上げ、ブラインドの外が明るくなっていることに気づいたHさんは、はっと現実に引き戻されます。

「まずい、もう朝だ。急いで支度して出かけないと。クルマを飛ばせば間に合うかもしれない」

酒気帯び運転、そして事故

ドンッ!!

強烈な衝撃で目が覚めました。Hさんが視線を上げると、フロントガラスの向こうに、歪んだクルマのボンネットと、大きく曲がった歩道のガードレールが。

「しまった、やってしまった……!」

事故、居眠り運転、酒気帯び運転……背中を伝う冷たい汗。

急いでクルマを降り、周囲の状況を確認します。どうやら人身事故ではない様子。ひとまず安堵したHさんは、すぐにポケットからスマートフォンを取り出し、震える手で電話をかけます。

「すみません……事故を起こしてしまいました……」

警察が到着するのを待つ間、鈍い頭で昨夜からの出来事を思い返し、後悔の念に駆られるHさんでした。

飲酒への依存は社会的問題を引き起こしやすい

だめだとわかっているのについ飲んでしまい、それが原因で酒気帯び運転などの社会的問題を引き起こしてしまうケース。このように飲酒を自分でコントロールできない状態に陥っている場合は、アルコール依存症の初期の可能性があります。

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