飲酒により引き起こされる病気
認知症
飲酒による「酔い」は中枢神経に対するアルコールの作用であり、アルコールの血中濃度が上昇するにつれて中枢神経のさまざまな機能を低下させます。慢性的な多量飲酒は脳の萎縮や脳血管障害を引き起こし、また飲酒に伴う頭部外傷やけいれんの既往などが認知症発症の原因になるとされています。
2008~2013年に実施されたフランスの調査では、アルコール使用障害*は認知症の発症リスクを3.3倍に高め、特に65歳未満の若年性認知症の発症リスクを高めることが明らかになりました1)。また、男性の若年性認知症患者さんのうち、その半分以上がアルコールに関連する認知症であるという結果も報告されました(下図)1)。
若年性認知症患者さんの人口ピラミッド
- 対象
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2008~2013年にフランスの病院に入院した成人31,624,156人のうち、若年性認知症と診断された57,353人
- 方法
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アルコール使用障害と若年性認知症との関連を検討した
ただし、アルコール関連認知症は可逆性な側面があることが特徴とされており、飲酒を止めることで元に戻るケースがあるため、早期に対処することが大切です。また、食事をせずに飲酒する習慣がある方は、ビタミンB1などの大切な栄養素が不足し、認知症になりやすいと言われているため、栄養バランスに対する配慮が必要です。
- *アルコール使用障害とは:米国精神医学会が作成する精神疾患・精神障害の分類マニュアルに基づく診断名です。最新の分類マニュアルでは「アルコール依存症」という診断名がなくなり「アルコール使用障害」という新しい診断名が提唱されています。日本では一般的にWHOが作成する国際疾病分類を用いて診断を行うため、「アルコール依存症」という診断名が主に用いられています。
文献
- 1)Schwarzinger, M. et al. : Lancet Public Health.2018; 3(3): e124-e132.