監修:筑波大学 健幸ライフスタイル開発研究センター長 筑波大学医学医療系 地域総合診療医学 准教授 吉本尚先生

飲酒により引き起こされる病気

心房細動

週末や休暇中にお酒をたくさん飲んで楽しむこともあるかもしれません。そのような休日や休暇明けに、動悸、息切れ、胸のくるしさ、めまい、ふらつき、倦怠感、むくみを経験したことはありませんか?

休暇中の多量飲酒や頻回飲酒に伴い生じる症状は、不整脈が原因になっている場合があり、歴史的には、1978年に“Holiday heart syndrome”と海外の文献に報告されました。以降、研究が積みかさねられ、それらの不整脈の原因の多くは、心房細動と関係あることがわかってきました(下図)1)

“Holiday heart syndrome”とは

アルコールにより誘発される不整脈は、“Holiday heart syndrome”と呼ばれています。主な症状は動悸・息切れ・胸のくるしさ・めまい・ふらつき・倦怠感・むくみがあります。お酒を飲みすぎた日や翌日に感じるこれらの症状は、不整脈が原因の可能性があります。

心房細動に関連する生活習慣として肥満、高血圧、糖尿病が代表的なリスク因子と言われていますが、実は習慣的な飲酒は、心房の炎症や高血圧、睡眠障害と関係し、直接的・間接的に心臓の構造的変化をきたします。左心房の線維化のような構造的変化は心房圧の上昇などとも関連し、さらに心臓の基質的変化が進行します。これらは心臓に慢性的な電気生理的変化をきたします。一方、休日の機会的な多量飲酒がトリガーとなり、急性の酸化ストレスに関連した心筋障害、自律神経調節の不安定化、心拍変動などを介して、心臓に急性の電気生理的変化をきたします。これらの変化は共に、心房細動の発症や持続に関連すると言われています(下図)。このように飲酒は心房細動の発症リスクを高めるだけでなく、持続的な飲酒は、心房細動が持続化し、血栓症や心不全に進展するリスクにも関連することが報告されています2,3,4)

飲酒に関連する心房細動の発症メカニズム

習慣的な飲酒によって心房炎症&酸化ストレス・高血圧・睡眠時無呼吸症候群・左心室の構造的変化などが引き起こります。続くと左心房の気質的変化(線維化・構造的変化・左心房圧の上昇など)につながります。そこに、機会的な多量飲酒による心筋細胞の損傷・急性の酸化ストレス・自律神経の不随・心拍変動がトリガーとなって電気生理的変化が起こることで心房細動が発症します。

心房細動の治療

心房細動の治療の目標は血栓症予防、心不全予防、症状の改善です。現在、心房細動の治療には薬物治療(血栓予防薬・抗不整脈薬)やカテーテル治療があります。特に医療機器の向上はめざましく、心房細動が初期の段階でカテーテルにより治療された場合は、80~90%根治される可能性があると報告されています。治療に成功した場合は、一定の条件を満たせば、心房細動に関連する内服治療を中止することも可能です。しかしながら日本人を対象とした報告によると、初回カテーテル治療後に多量飲酒・頻回飲酒を継続される方は心房細動の再発・新たな不整脈の出現のリスクが高くなり、カテーテル治療に伴う十分な恩恵が得られないことが示唆されています5)

飲酒に起因する動悸や息切れなどの症状がある場合は、飲酒により誘発された不整脈が原因となっている場合もあります。気になる方は、生活習慣や飲酒習慣を見直し、医師に相談をしましょう。

文献

  • 1)Ettinger, P O. et al. : Am Heart J. 1978; 95(5): 555-562.
  • 2)Kodama, S. et al. : J Am Coll Cardiol. 2011; 57(4): 427-436.
  • 3)Ruigómez, A. et al. : BMC Cardiovasc Disord. 2005; 5: 20.
  • 4)Overvad, TF. et al. : Heart. 2013; 99(15): 1093-1099.
  • 5)Takigawa, M. et al. : J Am Heart Assoc. 2016; 5(12): e004149.
  • 監修:東京医科歯科大学 医学部附属病院 循環器内科 先進不整脈学 寄付講座助教 滝川正晃先生

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