こんな場合は相談窓口や医療機関に相談しましょう
抜け出せない飲酒習慣
お酒をやめると決意する
お酒が大好きで、晩酌しない日はなかったAさん。しかし、周りから体のことを心配され、健康診断で肝機能と血圧の数値が高めだと指摘されたことを機に、お酒をやめることを決意しました。
「よし、今日から一滴も飲まないぞ」
Aさんは冷蔵庫のビールや戸棚のウイスキーを思い切って全部捨て、その代わりにコーヒーを口にしながらリビングのソファでくつろいでいます。
「こんなに頭がすっきりしていることなんて、最近なかったな」
新しい毎日、生まれ変わった自分に、思わず上機嫌になるAさんでした。
すぐまた元通りの飲酒習慣に
それから1週間が経ちました。
「あなた、お酒やめたんじゃなかったの?」
ぎくりとして後ろを振り返るAさんの手には、ビールの缶が握られています。
「いや、これは……」しどろもどろになりながら、
「やっぱり夜眠る前にコーヒーというのも良くないだろ? だからまあ、ほんの少しだけ、寝酒みたいなものだよ」
苦笑いを浮かべつつ奥さんに言い訳するAさんでしたが、それからさらに1週間が経ち、1カ月が経つうちに、晩酌の習慣と飲酒量は再び元に戻ってしまいました。
『治療』という医師からの提案
かかりつけの内科で肝機能と血圧の定期検診を受ける日。結局お酒をやめられなかったことを面目なさそうに話すAさんに、医師はこんな提案をします。
「もしかしたら、アルコール依存症かもしれませんね。一度診断させていただいて、もしそうであれば、きちんとした治療を受けてみませんか」
驚くAさんに、医師はやさしく丁寧に説明を続けます。アルコール依存症は誰にでも起こりうる病気であること、治療には完全に飲酒を断つ『断酒治療』と、アルコールによる害を少なくするため飲酒量を減らす『減酒治療』があること、そして治療を続けた多くの人たちが回復していること。Aさんは、これまでのお酒による失敗を苦々しく思い返し、治療を受けてみようと思いました。