監修:筑波大学 健幸ライフスタイル開発研究センター長 筑波大学医学医療系 地域総合診療医学 准教授 吉本尚先生

減酒治療について

近年、いきなり飲酒をやめることはできなくても減酒をする、もしくは、断酒の前の中間目標として飲酒量を減らす減酒治療が注目されています1)

減酒治療は、病気の理解を深める「導入期」、治療の継続を目指す「治療開始時」、現状を維持して再発を防ぐ「維持管理期」の3つのステージがあります。

「アルコール依存症の症状と進行ステージ」についてはこちら

減酒を目標とした場合のアルコール依存症の治療ステージ

導入期 疾患理解:疾患としての理解を深める、離脱症状、併存疾患の程度の確認。治療開始時 治療継続:飲酒量の目標設定、併存疾患、社会・家庭生活の問題の経過の確認。維持管理期 状態維持、再発防止:飲酒量の目標の見直し、併存疾患、社会・家庭生活の問題の経過の確認、医療機関への通院。
注)治療は基本的に通院で行い、患者さんの経過に応じて専門医療施設と連携して治療を進めることもあります。

減酒治療では、心理社会的治療が中心に行われ、飲酒量や服薬状況、健康状態、日常生活上の変化を確認しながら、目標とする飲酒量の達成、治療の継続を目指します。日記などを用いて日々の飲酒状況を記録し、医師と共有することは治療継続の助けになります。

減酒治療における心理社会的治療

患者の意向:1 飲酒量の目標設定、2 飲酒量の確認、3 服薬状況などの確認、4 全体的な改善の評価、5 治療目標の再評価
  1. 1.
    飲酒量の目標設定 患者さんご自身が無理なく達成可能な飲酒量目標を設定します。
  2. 2.
    飲酒量の確認 日々の飲酒量を記録し、通院時に飲酒量を確認します。
  3. 3.
    服薬状況などの確認服薬状況、離脱症状が出ていないかなど現在の治療が患者さんご自身に合っているかどうかを確認します。
  4. 4.
    全体的な改善の評価治療による、健康状態や日常生活上の変化について確認します。
  5. 5.
    治療目標の再評価経過に基づいて、飲酒量の目標を見直します。目標の達成度にかかわらず、目標を見直しながら治療を継続していくことが重要です。

日々の飲酒状況を記録し医師と共有することは治療継続の助けになります。

アルコール依存症の薬物治療

アルコール依存症の治療は心理社会的治療が中心となりますが、治療をサポートする選択肢の1つとして、お薬を使用することがあります(下図)。

従来、アルコール依存症に用いられるお薬は、アルコールによる離脱症状や不安・不眠などの併発症状を軽減させるための薬と、断酒を維持するための薬がありました。

近年、新たに飲酒量を減らすことを目的とした薬が登場し、治療の選択肢が広がりました。

アルコール依存症の薬物治療

離脱症状を抑える薬

抗不安薬や睡眠薬など

断酒を維持するための薬
抗酒薬

服用中に飲酒すると吐き気などの不快な症状を起こし、飲酒を避けるようになります。

飲酒欲求を抑制する薬

飲酒欲求を抑え、断酒の維持を助けます。

飲酒量を減らすための薬

飲酒する前に服用し、飲酒欲求を抑えることで飲酒量を減らします。

  • 監修/新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン作成委員会. 新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドライン. 新興医学出版社. 2018. P20-21.

お薬の使用にあたっては、医師や薬剤師の指示に従ってください。

減酒治療のコンセプト ハームリダクション

従来、アルコール依存症の治療は、患者さん本人がアルコールで徹底的に痛い目に会わないと飲酒をやめないという「底つき」の考え方に基づき行われていました。

しかし、近年、すぐに飲酒をやめることができない場合は、飲酒量を減らすことからはじめ、飲酒による害をできるだけ減らす「ハームリダクション」という概念が広まりつつあります1)

ハームリダクションは、人権を尊重し、個人と社会の健康と安全を高めることを目的としており、アルコール依存症の治療や支援を考える場合に大切な視点であると注目されています。また、抵抗感が強いアルコール依存症の治療の敷居を下げることで、より多くの方が飲酒問題に早期に気づくきっかけとなり、病気の深刻化を防ぐことが期待されています。

減酒治療は、ハームリダクションの考えのもと行われる治療法といえます。

ただし、減酒治療はすべてのアルコール依存症患者さんに行える治療ではないことを念頭に置き、アルコール依存症の治療にあたっては、医師と相談しながら治療法を選択していくことが大切です。

文献

  • 1)編集/成瀬暢也.アルコール依存症治療革命.中外医学社; 2017. P22-55.

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アルコール依存症の治療

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