飲酒量と健康リスクの関係
お酒はコミュニケーションを円滑にしたり、ストレス発散、旅行先の楽しみ、食事を美味しくしてくれる一方、慢性的な飲みすぎは、健康へ影響を及ぼします。
お酒をよく飲む人の健康リスク
多量のお酒を習慣的に飲み続けると、胃や肝臓などの消化器系だけでなく、心臓や脳など全身の臓器に障害が起こる可能性があります(下図)。飲酒により引き起こされる主な病気として、肝障害や高血圧、脳神経障害(睡眠障害、認知症、アルコール依存症)などが挙げられます。また、アルコールはがんの発症リスクを高める危険因子としても知られています。世界保健機関(WHO)は、お酒は30種類以上の病気の原因であり、200種類以上の病気と関連していると報告しています。
飲酒量と健康リスク
平均的な飲酒量と長期的な健康リスクの関係には、下図のように病気の種類によってさまざまなパターンがみられます1、2)。
高血圧では平均的な飲酒量が増加すればするほど発症リスクが高まるのに対し、肝硬変では平均的な飲酒量の少ないうちはリスクの上昇はわずかですが、平均飲酒量が多くなるとリスクがより高まるのが特徴です。また、虚血性心疾患では、飲酒しない方に比べて少量を平均的に飲酒する方のリスクが低くなりますが、さらに平均飲酒量が増えるとその増加に伴って発症リスクが高くなるという特異的なパターンがみられます。
- 厚生労働省:成人の飲酒実態と関連問題の予防について(より改変)
https://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/houkoku/061122b.html(2023年1月現在)
生活習慣病のリスクを高める飲酒量
厚生労働省が推進する国民健康づくり運動「健康日本21(第二次)」によると、生活習慣病のリスクを高める量を飲酒している方とは、1日当たりの純アルコール摂取量が男性40g以上、女性20g以上の方とされています。
節度ある適切な飲酒量は、1日当たりの純アルコール摂取量が20g程度とされています。ただし、女性や高齢者、お酒を分解する力が弱い方(飲酒後に顔が赤くなる方)はより少量の飲酒が適当です。
なお、20歳未満や妊婦・授乳婦については、この限りではなく、飲酒することは避けるべきとされています。
純アルコール量20gの目安
飲酒量(mL)× アルコール度数(%)/100 × アルコール比重0.8= 純アルコール量(g)
「ときどき飲む人」、「飲まない人」と比べた際の「お酒をよく飲む人」のリスク
日本で実施された大規模なコホート研究の結果から、「お酒をよく飲む人」の健康上のリスクが明らかになりました3)-11)。
お酒を減らすことによる効果
実際にお酒を減らすことができた方の実感として、次のようなメリットが挙げられています。
- 翌日の仕事のパフォーマンスが上がった
- 飲んだ翌朝の寝起きがすっきりした(二日酔いや、胃腸の調子など)
- 血圧が下がった
- 体重が減った
- 肝臓の検査値が改善した
- 頭がはっきりして、集中がしやすくなった
- 友人や家族と飲酒のことでもめなくなった
- おこづかいに余裕ができ、飲酒以外の趣味などにまわせるようになった
など
文献
- 1)厚生労働省:成人の飲酒実態と関連問題の予防について(より改変)
https://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/houkoku/061122b.html(2023年1月現在) - 2)Rehm, J. et al.: Alcohol Alcohol.2013;48(4):509-513.
- 3)Tsugane S. et al.: Am J Epidemiol. 1999; 150(11) :1201-1207.
- 4)Inoue M. et al.: Br J Cancer. 2005; 92(1): 182-187.
- 5)Ishiguro S. et al.: Cancer Letters. 2009 ;275(2) :240-246.
- 6)Otani I. et al.: Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2003;12(12):1492-1500.
- 7)Shimazu T et al.: Int J Cancer. 2012;130(11):2645-2653.
- 8)Sawada S. et al.: Int J Cancer. 2014;134(4):971-978.
- 9)Iso H. et al.: Stroke. 2004;35(5):1124-1129.
- 10)Suzuki R. et al.: Int J Cancer. 2010;127(3):685-695.
- 11)Ikehara S. et al.: Prev Med. 2013;57(5):505-510.