監修:筑波大学 健幸ライフスタイル開発研究センター長 筑波大学医学医療系 地域総合診療医学 准教授 吉本尚先生

減酒治療に取り組む患者さん&主治医のインタビュー

患者さん&主治医のご紹介

O.T.さん 吉本先生のもとで減酒治療を始めて5年が経過した患者さん

N.Y.さん 吉本先生のもとで減酒治療を始めて9か月が経過した患者さん

吉本 尚先生 筑波大学医学医療系 地域総合診療医学 准教授
北茨城市民病院附属家庭医療センターと筑波大学でアルコール低減外来を開設、診療を行っている。

お酒を減らす治療について 治療中の患者さんと先生にお話をきいてみました

インタビュー

O.T.さんと主治医

減酒治療をはじめたきっかけは何でしょうか?

O.T.さん

会社の健康診断の結果も悪くなり、仕事にも集中できず、自宅で転んで骨折したりすることが続きました。このままではまずいと思うようになりました。

吉本先生

どこかに相談はされましたか?

O.T.さん

家内に相談したところ、保健所とかインターネットで病院を探してきてくれまして、近所の専門医療機関に通うようになりました。しかし、お酒を止めるように言われ、入院する必要もあり、自分の希望と合わず、受診を止めてしまいました。そんなときに、電車の中でスマホを検索していたところ減酒治療というのがあると知って医療機関をまた受診してみようと思えました。

吉本先生

「断酒は難しいけれど減らすことなら出来そう」という方は多い印象です。減酒治療という選択肢があると患者さんも気軽に受診ができるようです。

減酒治療を続けられた理由を教えてください

O.T.さん

はじめての受診時のアンケートで、先生からお酒を減らす自信があるかないかを0-10で答えてくださいと聞かれて、私の答えは2でした。そのくらい当時はお酒から抜け出すことができないと思っていました。

吉本先生

アルコール依存症は飲む量や時間をコントロールできない疾患と言われていますが、減酒治療をつづけていくことで最終的に断酒できるかたもいらっしゃいますので、まずは治療を始めてその後に決めていくのはいかがでしょうか?とお話ししたと思います。

O.T.さん

治療を始めると、だんだんお酒の量が減ってきて、仕事の環境も変わったこともあり、飲酒の機会も減らすことができました。健康診断の結果も良くなってきました。

減酒治療により生活や人生にどんな変化がありましたか?

O.T.さん

以前は、電車通勤中に飲酒をすることもありましたが、現在通勤中に飲まないでいられるようになり、毎日事務の仕事も集中してこなせるようになりました。夜の飲酒も自身でコントロールできるようになったため、体調もとても良好になり、休みの日は趣味のオートバイにも乗れるまでになりました。人生の楽しみの一つです。

吉本先生

アルコール依存症は、お酒を飲む時間や量をコントロールできない疾患と言われていますが、医療機関で減酒治療を始められると3か月くらいで飲酒量に変化がみられます。気分や体調によってお酒の量は増えたり減ったりしますので1年くらい経過をみて、酒量を安定してコントロールできるようになってきているかをみています。

O.T.さん

私は治療を始めてから5年が経過していますが現在も3か月に1回の受診を続けています。家族も今は安心していますし、先日は娘の結婚式も無事に終えることができました。娘も喜んでくれているかなと思います。

吉本先生

どんな方に対してもお酒との付き合い方を見直すお手伝いをしていければと思っています。

N.Y.さんと主治医

減酒治療をはじめたきっかけは何でしょうか?

N.Y.さん

3年ほど前に専門の病院を受診したのですが、断酒と言われ、入院にも抵抗があって治療をあきらめていました。そんなとき、妻がインターネットで吉本先生の「アルコール低減外来」をみつけてくれて、これなら行ってみようと思い、受診しました。治療を受けてみると、私の希望を聞いて治療方針を示してくださるので、やってみようと、はじめました。

吉本先生

実際、「断酒は難しいけれど、減らすことはできそう」という方は多いですね。減酒治療という選択肢があると、患者さんも気軽に受診できるようです。

減酒治療を続けられている理由について教えてください

N.Y.さん

吉本先生のアルコール低減外来での治療は、「やめるのは難しいけれど、少しでも飲酒量を減らしたい」と思っていた私に合っていたんです。優しい雰囲気で私の話を聞いてくれる吉本先生とお会いして、最初の診察で「この先生にかけてみようかな」と思いましたね。治療の内容を押し付けるのではなく一緒に考えてくださるのが、続けられている理由の一つかと思います。

吉本先生

アルコール依存症は飲酒量や時間をコントロールできない状態といわれていますが、飲酒量を減らせる人がいることが分かってきています。N.Y.さんは、「減らすことはできそうだけれど、断酒は難しいです」とおっしゃったので、「まず減らして、その後に断酒する人もいれば減酒を続ける人もいます。減らしてから、その後について決めていくのはいかかですか」とお話をしました。

減酒治療後の変化やこれからの目標はありますか?

N.Y.さん

以前は満足するまで飲み続けていましたが、受診して1ヵ月くらいでお酒の量が減りはじめ、ときには、お酒が家になければ「仕方ない」とやめられるようになりました。その頃から、よく眠れるようになって気力もでてきました。妻と散歩にも行けるようになりましたし、妻と会話が続くようになりました。

吉本先生

患者さんにもよりますが、治療開始から3ヵ月くらい経過したところで状態を確認すると、そのくらいで変わりはじめる人が多いように思います。気分や体調によってお酒の量が増えたり減ったりしますので、1年くらい経過をみて、お酒の量が安定してコントロールできるようになっているか確認しています。

N.Y.さん

私は治療をはじめて9ヵ月が経ちますが、まだ飲みたい気持ちが高まるときと、飲まなくても大丈夫なときがあります。この気持ちの波を低く抑えて体に害がでない程度に飲む量を落ち着かせたいです。飲まない日ができたらそのほうが良いと思っています。

吉本先生

どんなときも患者さんがお酒との付き合い方を見直すお手伝いをしていけたらと思っています。

  • 上記は患者さん個人の感想です。すべての患者さんで同様な結果を得られるわけではありません。

受診を迷われている方へ

「飲酒をコントロールすることが難しくなってきているかもしれない」と気になる程度で受診してよいのか、お酒の飲みすぎ程度のことを病院で先生に相談してよいのか、と迷うかもしれませんが、気になる方は遠慮せず、専門の医療機関に相談してみてください。

また、アルコール依存症の治療を行っている医療機関のすべてで減酒治療を受けられるわけではないので、ご興味がある場合には事前に確認することをおすすめします。

監修:筑波大学 健幸ライフスタイル開発研究センター長 筑波大学医学医療系 地域総合診療医学 准教授 吉本尚先生

アルコール依存症の治療

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