飲酒により引き起こされる病気
肝障害
アルコールは、胃および小腸で吸収され、主に肝臓でアルコール脱水素酵素などにより分解され、悪酔いや頭痛、動悸の原因ともなるアセトアルデヒドに代謝されます。そして、アルデヒド脱水素酵素により、体に害のない酢酸へと分解されます。この酢酸は血液により全身へめぐり、水と二酸化炭素に分解され、汗や尿、呼気中に含まれて外へ排出されます(下図)1)。
このように肝臓は、アルコールを分解(解毒)する働きをもつ重要な臓器であり、過度の飲酒によって最も障害を受けやすいと言われています。
アルコールの代謝
多量のアルコールを長期間飲み続けると、アルコールが分解される過程で作られる中性脂肪が増加し、肝臓に蓄積されていきます。さらに飲酒を続けると、肝臓の細胞に炎症が起こったり、細胞が破壊されて、その隙間に線維状の組織が増殖(線維化)したりすることで、肝臓の働きが衰えてくるようになります(アルコール性肝障害)。
アルコール性肝障害の一般的な経過を下図に示します2)。多量の飲酒により「脂肪肝」を発症し、そのまま飲酒を続けると「アルコール性肝炎」、「肝線維症」へと進行し、最終的には「肝硬変」や「肝臓がん」になり、生命をおびやかす危険性があることが知られています。
肝臓は「沈黙の臓器」といわれるように、肝臓の機能が弱っていても、初期の段階では自覚症状がなく、健診などで異常が指摘されることがほとんどです。アルコール性肝障害の早期では、飲酒をやめれば改善する可能性があります。一方、自覚症状があらわれ、病気が進行すると回復が難しい場合が多いため、お酒を飲む方は定期的に検査を行い、異常が認められた場合は、早期から飲酒量を減らしたり、お酒をやめたりすることが重要です。
アルコール性肝障害の経過
- 堀江義則 : 肝胆膵, 76(1) 11-18, 2018(図2より作成)
文献
- 1)編集/アルコール保健指導マニュアル研究会. 健康日本21推進のためのアルコール保健指導マニュアル;2003. P11-19.
- 2)堀江義則 : 肝胆膵. 2018; 76(1):11-18.