監修:筑波大学 健幸ライフスタイル開発研究センター長 筑波大学医学医療系 地域総合診療医学 准教授 吉本尚先生

飲酒により引き起こされる病気

肝障害

アルコールは、胃および小腸で吸収され、主に肝臓でアルコール脱水素酵素などにより分解され、悪酔いや頭痛、動悸の原因ともなるアセトアルデヒドに代謝されます。そして、アルデヒド脱水素酵素により、体に害のない酢酸へと分解されます。この酢酸は血液により全身へめぐり、水と二酸化炭素に分解され、汗や尿、呼気中に含まれて外へ排出されます(下図)1)

このように肝臓は、アルコールを分解(解毒)する働きをもつ重要な臓器であり、過度の飲酒によって最も障害を受けやすいと言われています。

アルコールの代謝

肝臓によるアルコール代謝のメカニズムについて、アルコールがアセトアルデヒドに代謝される過程でアルコール脱水素酸素(ADH)などに分解される。アセトアルデヒドが酢に代謝される過程で2型アルデヒド脱水素酸素(ALDH2)などに分解され、2つの分解にはアルコール代謝酵素には遺伝的多型が存在します。酢酸が水や二酸化炭素に代謝するされる過程では熱エネルギーが発生します。

多量のアルコールを長期間飲み続けると、アルコールが分解される過程で作られる中性脂肪が増加し、肝臓に蓄積されていきます。さらに飲酒を続けると、肝臓の細胞に炎症が起こったり、細胞が破壊されて、その隙間に線維状の組織が増殖(線維化)したりすることで、肝臓の働きが衰えてくるようになります(アルコール性肝障害)。

アルコール性肝障害の一般的な経過を下図に示します2)。多量の飲酒により「脂肪肝」を発症し、そのまま飲酒を続けると「アルコール性肝炎」、「肝線維症」へと進行し、最終的には「肝硬変」や「肝臓がん」になり、生命をおびやかす危険性があることが知られています。

肝臓は「沈黙の臓器」といわれるように、肝臓の機能が弱っていても、初期の段階では自覚症状がなく、健診などで異常が指摘されることがほとんどです。アルコール性肝障害の早期では、飲酒をやめれば改善する可能性があります。一方、自覚症状があらわれ、病気が進行すると回復が難しい場合が多いため、お酒を飲む方は定期的に検査を行い、異常が認められた場合は、早期から飲酒量を減らしたり、お酒をやめたりすることが重要です。

アルコール性肝障害の経過

アルコール性肝障害の経過について、アルコールを過剰摂取した場合90~100%は脂肪肝を発症しますが、飲酒量低減・断酒をすることで改善・治癒に向かう一方、30~40%は肝線維症を発症し、10~20%はアルコール性肝炎を発症するケースがあり重症化すれば最悪の場合死亡するリスクがあります。
  • 堀江義則 : 肝胆膵, 76(1) 11-18, 2018(図2より作成)

文献

  • 1)編集/アルコール保健指導マニュアル研究会. 健康日本21推進のためのアルコール保健指導マニュアル;2003. P11-19.
  • 2)堀江義則 : 肝胆膵. 2018; 76(1):11-18.

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